情緒と数学ー『はじめアルゴリズム』からー

このところ古典ばかり読んでいたので、ちょっと趣向を変えてマンガの話。

『はじめアルゴリズム』(三原和人、2017–、講談社、既刊5巻)という数学に関するマンガをご存知だろうか。数学に天武の才を持つ小学五年生関口ハジメが、同郷の出身である老数学者内田豊と出会い、その才を開花させていくというストーリーである。主人公ハジメの才を徐々に引き出していく数学者、内田のモデルは、往年の世界的数学者岡潔であるとされている。それがわかるシーンがあるので、引用しておく。

君は数学にとって重要なものが何かわかるか?(中略)情緒だよ

(『はじめアルゴリズム』1巻、p.66)

岡潔の数学の中心には「心」があるというのは有名な話である。このシーンは間違いなくそれを意識していると言えよう。

確かに数学は見た目で敬遠されがちである。しかし数学でしか表現できない大切なものは、間違いなく私たちの心の中にある。『はじめアルゴリズム』は、そうした情緒としての数学、暖かさを持った数学を私たちに示してくれる。どうぞ肩の力を抜いて、ソファに座って暖かいコーヒーでも飲みながら読んでいただきたい作品である。