死、二律背反、真実、対話

祖母が亡くなったのはもう2ヶ月以上前の話になる。私はその死に目に会えなかったが、私が急遽帰省して目にした、その死から約半日後の彼女の姿は、私の記憶から永遠に離れることはないだろう。 「軽やかであり、しかしこれ以上ないほどに厳かだった」という…

研究序説 「私」とメディアー『声の文化と文字の文化』(W・J・オング)からー

この「私」とは誰か、という問いについては古くから多くの思想家たちが議論し合ってきた。例えば近代においては-もちろん様々な意見があったはずだが-超越論的自我が経験的自我を統御しているという考えが主流だった。この言説を、誤解を恐れず平易な表現…

「私」と習慣、そして幸福ー伊藤計劃『ハーモニー』からー

私は基本的に規則正しい生活をしている。概ね朝5時半くらいから6時半くらいに目覚め、夜9時半から10時半くらいの間に床に就く。もちろんこのサイクルから外れる日もあるが、それでもこのサイクルになるべく近づけるよう努力する。 私がこうした生活習慣に注…

語彙力の増強ーTOEFL受験からー

先日俺は人生で初めてTOEFL iBTを受験した。今回はそれについての話である。 受験する前、俺はこのテストの得点源はリーディングパートだと思っていた。他のパートに比べて時間的に余裕があり、かつ完全マークシート形式なので点数を稼ぎやすいと考えていた…

仏教、知能、差異、他者、身体ー「人工知能のための哲学塾atゲンロンカフェ」からー

昨日(2月8日(金))、ゲンロンカフェ主催のイベント「人工知能のための哲学塾atゲンロンカフェ」に行ってきた。今回はそれについてつらつらと所感を述べる。 三宅さんは、今の人工知能は極めて機能主義的であり、存在論的な人工知能のあり方ということはこれ…

フランス語学習について

俺はフランス語が好きだ。しかしまだそれを実用できる段階にはない。今俺に足らないのは圧倒的に語彙量だと思う。ではいかにしてそれを増強するか? 塾で英語を教えていて思うことだが、語彙力ほど増強に時間のかかる能力は、語学学習に必要なものの中では他…

或阿呆の一日ー春休みー

春休みに入ってもうすぐ一週間が経つ。あいも変わらず語学を中心にした勉強生活を展開している。 と言っても課題も何もないので、流石にそれだけでは味気ない。そこで色々やってみることにした。 まず朝、朝食もそこそこに机に向かってまずやることは写経。…

読書の日々ー『三文オペラ』、『マクベス』、『青年』からー

私は、基本的に本は古典に限ると思っている。もちろん現代に書かれたものが悪いと言いたいのではない。ただ、時代の淘汰を生き抜いてきた書物には一定以上の価値があると認めて差し支えないだろうと考えているだけのことである。大学の図書館に岩波文庫が多…

哲学と数学ー2018年度京大理系数学第4問からー

個別指導塾の講師をしていることは前の記事で書いたが、最近は高校生を担当することが多い。そこで高校数学(数1)を教える機会があった。その子が持ってきた問題は、大学受験レベルでこそないものの、決して低レベルではなく、非常に数学らしい数学で面白か…

あ、僕「EGOIST」っていうバンドが好きです

僕は塾講師のアルバイトをしている。といっても個別指導塾なので、感覚としては家庭教師に近い。しかし家庭教師と決定的に違うのは、基本的に不特定の生徒さんを相手に授業するという点だ。今日授業する子がどんな子なのか、実際に会うまではわからない。 こ…

仏教と神経科学ー『哲学のメタモルフォーゼ』からー

最近(というか、ここ2ヶ月以上もの間)、『哲学のメタモルフォーゼ』(河本英夫・稲垣諭 編著、晃洋書房、2018)という哲学書をじっくり紐解いている。今年発売されたばかりなので、ある程度の規模の書店ならばほぼ確実に置いてあると思う。非常に興味深い…

情緒と数学ー『はじめアルゴリズム』からー

このところ古典ばかり読んでいたので、ちょっと趣向を変えてマンガの話。 『はじめアルゴリズム』(三原和人、2017–、講談社、既刊5巻)という数学に関するマンガをご存知だろうか。数学に天武の才を持つ小学五年生関口ハジメが、同郷の出身である老数学者内…

李白と数学ー『李白詩選』からー

李白は、中国盛唐時代の詩人であり、言わずと知れた「詩仙」である。私ももちろん高校の漢文の授業で幾度となく彼の詩には触れてきたが、この度ふと『李白詩選』(松浦友久編訳、1997、岩波文庫)を手にとって読んでみることにした。特に理由はなかった。た…

ケルト神話の主体形成ー『ケルト神話と中世騎士物語』からー

色々書きたいことはある。時間があるうちに書いておこう。 今回は田中仁彦氏(1995)の『ケルト神話と中世騎士物語』(中公新書)という本を読んで感じたことについて。 ケルト神話では、「他界」というモチーフが頻繁に用いられる。彼岸と言い換えてもいい…

キリスト教と仏教ー最近の読書録からー

久しぶりにブログを動かす。"serial experiments lain"の分析が空中分解してしまったので、初心に戻って何事か書く。 まずはここ1ヶ月で読んだ本(作品名のみ)を列挙する。 『ケルト神話と中世騎士物語』、『文化としての近代科学』『アカデメイア』、『聖…